
番外編について
この番外編は、「心を守る、もう少し具体的な方法をお伝えしたい」と思ったことから書きました。
不妊治療をしていると、
人前では平気なふりをしながら、心の中では傷ついたり、揺れたりしていることがたくさんあります。
でも、「それをどうやって受け流せばいいのか」「どう守ればいいのか」は、なかなか誰も教えてくれません。
だからこそこの番外編では、
少しでも“ 自分の気持ち ” を守るための、実践的な心の工夫をお伝えしています。
特別なことではなく、今日からでも試せるちょっとした考え方や、自分の心との付き合い方です。
このコラムを読んでくださっているあなたが、
ご自身の心にそっと手を当てるきっかけになれば、と願っています。
心ない言葉から自分を守るためにできること 〜5つの心の守り方〜
不妊治療という、とてもデリケートで個人的なプロセスを歩んでいるときに、
周囲からの何気ない一言が、心の奥に突き刺さることがありますよね。
悪気がないとはわかっていても、傷ついてしまう…
これは不妊治療中の方が 本当によく感じる心の痛みです。
「まだ子どもいないの?」の破壊力
「早く産まなきゃもったいないよ〜」
「子どもできたら人生変わるよ」
「子どもを産んで、親を安心させなきゃね」
こうした言葉。言っている方は、たいてい “ 悪気 ”はありません。
むしろ、よかれと思っていることさえあるかもしれません。
でも、それを聞いた瞬間、
心がスーッと冷えていくような、えぐられるような、そんな感覚になることはありませんか?
悪気がない言葉ほど、受け止めなきゃいけない?
「悪気がないってわかってる。でも、なんで私がそれをわかってあげなきゃいけないの?」
この疑問、とても大事な感情だと思います。
心理学的に言うと、「悪気がない言葉」は、
あなたの“ 前提 ” や “ 努力 ”を否定してくるものになりやすいんです。
1. 無意識の前提が絡む
まず、相手が「悪気がない」と感じる理由は、
その言葉に相手の無意識の前提が含まれているからです。
「まだ子どもいないの?」という言葉が、無意識に発せられるとき、
相手は自分の価値観を基にしている場合が多いのです。
例えば、相手が「結婚したらすぐに子どもができるのが普通だ」と思っていると、
あなたが子どもを持っていない状況がちょっと理解できないかもしれません。
この場合、相手が悪気なく「子どもは?」と聞いてしまうのは、
自分の「普通」を基準にしているからです。
相手の前提が「子どもを持つのが自然なこと」というものだから、
その前提に当てはまらないあなたの状況が不思議に思えてしまうんです。
2. 前提の違いが引き起こす「否定感」
このように、相手が無意識に自分の価値観や考えを基に話してしまうと、
あなたの価値観と相手の価値観がずれていることに気づかずに言葉が発せられることになります。
たとえば、あなたが不妊治療をしていてすごく努力していることを相手が知らないとき、
「まだ子どもは?」という一言が、
あなたにとっては「私の努力が理解されていない」「私は悪いことをしているのか?」
と感じさせられてしまうのです。
要するに、相手の前提に合わないあなたの状況が、無意識に否定されていると感じてしまうんですね。
3. 努力が軽視されていると感じる
さらに、この「悪気がない言葉」が辛いのは、
あなたの努力を無視されているように感じるからです。
不妊治療をしているあなたにとって、
毎日が大変で、時には心が折れそうになることもあります。
それなのに、「まだ子どもは?」と聞かれると、
「私がどれだけ努力しているかを知らない人が簡単に聞いてくる」と感じ、
あなたの努力が軽視されているように感じるのです。
このような言葉は、発言者が悪気がなくても、
あなたが無意識に「私の努力が認められていない」と感じてしまう原因になるんです。
4. 共感の欠如が生む心の痛み
相手が無意識に発している言葉は、共感の欠如を感じさせることがよくありますね。
そもそも共感とは、「相手の気持ちや状況を理解すること」です。
しかし、「まだ子どもは?」と聞かれることで、
相手が自分の状況を理解していないと感じることが多いですよね。
相手に悪気がないからこそ、「こんなにがんばっているのに、どうして理解してくれないんだろう?」と感じてしまうんです。これが、さらに心の痛みを増幅させます。
不妊治療していることを言わずに頑張っていたり、
治療で心身ともに疲れ切っている日々だったり、
うまくいかないことへの焦りと自責の思いがある時に
こちらの背景も知ろうともせず、無視されて、軽々と踏み込まれてしまうと
たった一言でも、大きく心が揺さぶられてしまう。
あなたの心を守る方法5つ
そんな時、相手の言葉を「受け止めない」って、できないの?と思いますよね。
今日は「あなたの心を守る方法5つ」お伝えしたいと思います。
心を守る方法①:「嫌なことをスルーする」イメージ法
無意識に自分の中まで入ってくる “ 周囲の言葉や価値観 ”に対して スルーできる方法です。
何か嫌なことを言われたなと気づいたら、
即座に イメージの中で、目の前に透明のガラスフィルターを置いてください。
言われたことは、そのフィルターを通して自分に来ることはなく、
相手に跳ね返って戻っていくイメージです。
このイメージ法をすれば、理不尽なことを言われた時にも
不必要にダメージを受けずに、嫌なこともスルーできますよ。

心を守る方法②受け止めず、うまくかわす練習をする
会話の中で、自分の中に入ってきそうな言葉があったら、
言葉を全て真に受けず、心の中で「ふわっと受け流す」技術も大切です。
- 「はいはい、またその話ね」 と心の中であしらう
- 深呼吸して、「これは私には関係ない」と呟く
- 心に のれんをおいて「ふわっとかわす」
ポイントは、「わかってもらおうとしなくていい」ということ。
相手の理解に期待せず、自分の心を優先してOKです。

心を守る方法③:「その人は “ わたしの事情 ”を知らない」ことを意識する
心ないように感じる言葉は、多くの場合、
- 不妊治療をしていることを知らない
- どれほど頑張っているかを知らない
- その一言がどれほど重たいかを知らない
つまり、「情報がない状態」で “ 自分の常識や価値観 ” で話しているだけなのです。
そんなときは、心の中でこう唱えてください:
「この人は、私の状況を知らないだけ。私への攻撃じゃない。」
「私に問題があるのではなく、“ 自分の基準 ” で勝手に話してるだけ」
この言葉を「心の定型文」にしておくことで、一瞬で “ 客観的視点 ” に戻る助けになりますし、
言葉を “ 自分の心の中まで入れない ” 準備ができます。

心を守る方法④:「感情を感じてあげる時間をとる」
外では平気なふりをしていても、
内側に溜まった感情はどこかで出してあげないと、自分自身に牙をむいてきます。
そんな時には、こんなことをしてみてください。
- 一人になれる時間に、「悔しかった」「悲しかった」「怒ってる」などの言葉を口に出す
- 日記やメモ帳に、思ったままの感情を吐き出す
- 頭の中で、信頼できる人に「本音で愚痴ってる自分」を想像してみる
(実際に話す必要はなく、イメージでOK)
感情は感じてあげることで、次の段階に移れます。
悲しみを悲しみとして認めることは、弱さではなく、回復の第一歩です。

心を守る方法⑤:「“ このままの自分 ” の肯定をくれる存在を持つ」
自分で自分を保つのがつらいとき、人は “ 外からのまなざし ” によって支えられことがあります
- カウンセラーや支援者のような、安全に話せる人を見つける
- 同じ境遇の人の言葉(SNS、ブログ、本など)に触れる
- 「わたしは大丈夫」と言ってくれる存在(自分の中のやさしい声でもいい)を意識する
- 心の中の“やさしい自分”に「よくがんばってるよ」と声をかける
一人で耐えるのではなく、
「自分の感情を理解し、肯定してくれる世界がどこかにある」と感じることで、
安心の土台ができます。

あなたは悪くない。むしろ頑張りすぎている
最後に、心に刻んでほしい言葉があります。
あなたは、何も悪くない。
むしろ、誰にも言えない痛みを抱えながら、日々を生きている。
それだけで、もう十分頑張ってる。
無神経な言葉に傷ついてしまうあなたは、弱いのではなく、ちゃんと「心がある人」なんです。
ですから、一人で抱えないでくださいね。守るべきは、あなた自身の心です。
安心して、弱音を吐いていい場所がここにあります。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
もしかしたら今、心の中ではいろんな気持ちが揺れているかもしれません。
「そんなふうに思っていいのかな」
「やっぱり私はダメなのかな」
「誰にも話せない、でも苦しい」――そんな思いが、あなたの中にあるかもしれません。
私自身、助産師として、そして心理カウンセラーとして、
多くの方々が同じように悩みながらも、
誰にも話せずに一人でがんばっている姿を見てきました。
そして、私はいつも思うのです。
人は、誰かに安心して本音を話せたとき、はじめて「自分の気持ち」を大切にできるのだと。
だから、もし今、心が少しでも疲れているのなら、
自分を守る時間、自分のために安心して話せる場所をつくってみませんか。
あなたがどんな気持ちを抱えていても、
否定されることのない場所で、あなたのペースで、あなたの言葉で話して大丈夫です。
あなたの中にある思い、まだ言葉にならない想いも、
ゆっくり一緒に紐解いていきたいと思っています。
🌱
「ちょっと話してみようかな」
そう思ったタイミングで、いつでもご連絡くださいね。
あなたの心が、少しでも軽くなりますように。

このコラムが、頑張るあなたの心を 少しでも和らげるものになりますように。