【連載コラム10】3.「寂しい」が言えない理由

「寂しい」が言えない理由 〜察してほしい気持ちと、伝えることの難しさ〜

「寂しいって 素直に言えたら、こんなにこじれなかったのに…」
そんな後悔を、心のどこかに抱えている方は少なくありません。

カップルや夫婦のご相談に関わる中で、私が何度も耳にしてきたのが、
「本当はただ、寂しかっただけなんです」
という言葉です。

でも、その“ ただ ” が、私たちにとってどれほど難しいことか。

助産師として、心理カウンセラーとして、結婚カウンセラーとして、
私は何度も、「寂しい」と言えなかったことで、関係がギクシャクしてしまった人たちと出会ってきました。

なぜ、「寂しい」と言えないのか

寂しいと伝えることは、心を開くことです。
そしてそれは、拒否されるかもしれないリスクを伴う “ 怖さ ” でもあります。

過去に「そんなことで?」と否定されたことがある。
甘えることを「わがまま」と言われて育った。
いつも誰かに遠慮してきた。

そんな背景を持つ人ほど、「寂しい」と言うことが、自分を “ さらけ出す ” ようで怖いのです。

“ 察してほしい ” という気持ちはどこからくるのか

「言わなくても、わかってほしい」
これはある意味、相手への期待と依存でもあります。

でも現実には、言葉にしなければ伝わらないことがほとんど。
寂しさも、怒りも、傷ついた気持ちも。

だけど、「寂しい」「つらい」「かまってほしい」といった気持ちを勇気を出して伝えたのに、
無視されたり、否定されたり、軽く扱われた経験があると、こう思うようになるのです──

「どうせ言っても無駄。言ってもどうせわかってもらえない」と。

そうなると、気持ちを言葉にすることそのものが怖くなり、
かわりに「察してくれたらいいのに」「気づいてほしい」と相手の “ 直感や配慮 ” に期待するようになるのです。

つまり、
「察してほしい」= 本当は伝えたいけど、伝えても傷つくだけだと諦めている
だからこそ、心の奥には「どうせわかってもらえない」というあきらめと不信感がある。

「察してほしい」という願いの裏には、
かつて「伝えてもわかってもらえなかった」経験や、
「気持ちを否定された痛み」が根づいているかもしれません。

だから、これは「わがまま」ではなく、
深い寂しさと怖さのあらわれでもあるのです。

気持ちを言葉にする練習を

でも、寂しいと伝えるのは、甘えでも、弱さでもありません。
むしろ関係を深めるための、勇気ある行為です。

たとえば、こんなふうに伝えてみることから始めてみましょう。

  • 「今日はちょっとだけ寂しいかも」
  • 「少しでも話せたら嬉しいな」
  • 「少しだけ、甘えたい気持ちがあるの」

最初からうまく言えなくても大丈夫。
自分の気持ちを大切にすることが、健やかな関係の第一歩です。

あなたに問いかけてみたいこと

  • 「察してほしい」と思ったとき、本当はどんな気持ちがありますか?
  • その気持ちを、ほんの少しだけ言葉にするとしたら、どんな言葉になりますか?
  • もしも拒否されなかったら、本当は何を伝えたいですか?

まとめ:寂しさは、関係を壊すものではない

あなたが寂しいと感じるのは、
相手とのつながりを大切に思っているからです。

寂しい気持ちを、壊す言葉ではなく、つなぐ言葉に変えていけるように。
そのための第一歩として、まずはあなた自身が、あなたの気持ちに寄り添ってあげてください。

次回は、「愛されたい気持ちが強すぎて、相手を責めてしまうとき」についてお話しします。
――あなたが怒ってしまうとき、本当は「悲しい」や「苦しい」気持ちが隠れていませんか?
愛されたい気持ちが強すぎて、相手を責めてしまうとき