【連載コラム3】第1話 妊婦さんを見ると心がざわつくのは、あなたが弱いからじゃない

※この連載について

「赤ちゃんを見ただけで涙が出てしまう」「妊婦さんを見ると、なぜか心がざわざわする」。 不妊治療の過程や流産・死産など、見えない悲しみを抱えている中で、どうしようもない感情が湧き上がることがあります。 この連載は、そんなあなたのために書きました。 助産師として、心理カウンセラーとして、そしてひとりの女性として――。 誰にも言えなかったその気持ちを、そっと一緒に見つめていけますように。


妊婦さんを見るだけで胸が締めつけられるあなたへ

買い物に行った時、電車で向かいに座った人がふっくらとしたお腹を抱えていた時。
思わず視線をそらしてしまったり、急に涙が出てきたり。

そんな経験、ありませんか…?

「自分でも、なんでこんな気持ちになるのかわからない」
「妊婦さんを見てつらくなるなんて、心が狭いのかな」

…そんなふうに自分を責めてしまうあなたに、まず伝えたいことがあります。

それは「その感情は、あなたが優しくて、一生懸命だからこそ湧いてくるものだ」ということです。


心がざわつくのは、あなたが “ 弱い ” からじゃない

あなたの心がざわつくのは、傷ついているから。 そして、深く願ってきたから

妊婦さんを見ると心が揺れるのは、 そこに “ 自分が手に入れられなかったもの ” が映るからです。

でも、それは嫉妬や意地悪な気持ちではありません。
ただただ、自分の中にある悲しみが反応しているだけ

人の心は、想像以上に繊細で、正直です。
頭では「仕方ない」と思っていても、心がそう感じてしまうのは、自然なことなのです。


「比べたくないのに比べてしまう」その罪悪感こそが、あなたのやさしさ

妊婦さんを見たとき、「あの人にはできて、私は…」と、思ってしまうこともあるでしょう。 そんな時、同時に罪悪感を抱いてしまう人も多いのです。

でも、そんなふうに感じてしまうこと自体が、あなたがどれだけ他人を思いやれる人か、という証拠だと私は思います。

感じたこと自体を否定する必要はありません。 大切なのは、“ 感じた自分 ” に気づいてあげること。

自分の心を見つめ、「今、私は悲しんでいるんだな」とそっと寄り添ってあげること。 それが、心の傷を癒していく第一歩です。


今日できる、小さなセルフケア

妊婦さんを見てつらくなった日には、
無理に気持ちを押し込めたり、打ち消そうとしないでいいですよ。

あなたの感情は、敵ではありません。

帰ってきたら、あたたかい飲み物を飲みながら、そっと目を閉じて、心に語りかけてみてください。

「つらかったね」「よく頑張ってるね」

声に出さなくても大丈夫。

その言葉が、自分の中にじんわり染みていくのを感じられるはずです。


おわりに 〜あなたの涙には意味がある〜

あなたが妊婦さんを見て心がざわつくのは、 妬んでいるからでも、意地悪だからでもありません。

それだけ願ってきた証。 それだけ大切に思ってきた証です。

どうかその気持ちを、責めずに受け止めてあげてください。

あなたはどう感じましたか?
このコラムは、あなたの心を少しでも軽くするきっかけになれたらと思って書いています。
涙を流したあなたが悪いわけではありません。
その涙の奥にある大切な気持ちを、一緒に見つけていけますように。

次回は、「友達の出産報告がつらいあなたへ ― 喜べない自分が嫌いになる前に」です。

大切な友達の幸せを心から喜びたいのに、どうしても素直になれない…そんな自分を責めていませんか?このコラムでは、あなたの心にそっと寄り添いながら、その揺れる気持ちに優しく光を当てていきます。