
※この連載について
「赤ちゃんを見ただけで涙が出てしまう」「妊婦さんを見ると、なぜか心がざわざわする」。
不妊治療の過程や流産・死産など、見えない悲しみを抱えている中で、
どうしようもない感情が湧き上がることがあります。 この連載は、そんなあなたのために書きました。
助産師として、心理カウンセラーとして、そしてひとりの女性として――。
誰にも言えなかったその気持ちを、そっと一緒に見つめていけますように。
「おめでとう」と言えなかった自分を責めていませんか?
大切な友達の出産報告。
本当は心から祝福したいはずなのに、胸が締めつけられて涙がこぼれてしまった。
「なんで私は喜べないんだろう」
「性格が悪いのかな」
そんなふうに、自分を責めて苦しくなったことはありませんか?
ここに相談にこられる方も、心のどこかで「喜ばなきゃ」と思いながらも、
素直に笑えなかったあの日のことを こうやってお話ししてくださいます。
でも どうかまず、その気持ちが出てくるのは自然なことだと、自分に言ってあげてほしいのです。
背景にある「悲しみ」と「孤独」
人は、自分が今手に入れられないものを目の前にしたとき、 無力さや寂しさ、焦りを感じるものです。
特に、長い時間をかけて妊娠を望んできた人や、辛い別れを経験してきた人にとって、
“ 出産 ”という出来事は、自分の傷に触れるトピックでもあります。
「おめでとう」と言うたびに、
「どうして私は?」という感情が沸き上がってくるのは、とても自然な心の反応です。
「祝えない自分」よりも、まず「傷ついた自分」に気づいて
祝えない自分を責めてしまう人ほど、優しくて真面目な人が多い気がします。
でもね、まず見てあげてほしいのは、「祝えない自分」ではなくて、
その奥にいる「傷ついたあなた」なんです。
その人の幸せを喜べないのは、 あなたが苦しみの中にいるから。
あなたが今、必死で毎日を生きているから。
まずは、その気持ちを抱えている自分を否定せず、
「そう感じている自分がいるんだ」と優しく受けとめてみてください。
今日できる、小さなセルフケア
出産報告を聞いてつらくなった日は、
SNSから少し距離を置いてみるのもひとつの方法です。
スマホを閉じて、自然の中を歩いたり、 お気に入りの香りのアロマを焚いたり、
「今ここ」に心を戻す時間を持ってみてください。
大事なのは、“ 感じた感情をなかったことにしないこと ” 。
それだけで、心は少しずつほぐれていきます。

おわりに 〜喜べなかったあなたも、ちゃんと大切な存在です〜
出産報告を素直に喜べなかったこと。 それを後悔してしまったあなた。
でも、その奥には、誰かを思う気持ちと、 自分を責めずにいたいという優しさがあったはずです。
どうかその優しさを、自分にも向けてあげてください。
あなたはどう感じましたか?
このコラムが、あなたの心を少しでも癒す時間になりますように。
喜べなかったあなたも、決して冷たい人ではありません。
その感情の奥にある“ほんとうの気持ち”を、一緒に見つめていきましょう。
次回は 「街中のベビーカーが刺さる日 ― 『羨ましさ』の奥にあるもの」です
ふとすれ違ったベビーカーに、胸がチクリと痛む日。
その“羨ましさ”の奥にある、本当の気持ちに気づいてあげませんか?