【連載コラム3】第3話:街中のベビーカーが刺さる日 ― 『羨ましさ』の奥にあるもの

※この連載について
「赤ちゃんを見ただけで涙が出てしまう」「妊婦さんを見ると、なぜか心がざわざわする」。
不妊治療の過程や流産・死産など、見えない悲しみを抱えている中で、
どうしようもない感情が湧き上がることがあります。 この連載は、そんなあなたのために書きました。
助産師として、心理カウンセラーとして、そしてひとりの女性として――。
誰にも言えなかったその気持ちを、そっと一緒に見つめていけますように。

ベビーカーが、目に飛び込んできたとき

ふと立ち寄ったカフェ、電車のホーム、スーパーのレジ待ち。
何気ない日常の中で目に入るベビーカーや赤ちゃん連れの親子たち。

何でもないふりをしながら、目をそらしたくなったり、 その場から早く立ち去りたくなったり、
あるいは、自分の中から何とも言えない気持ちが込み上げてきたり…

「こんな自分、いやだな…」と思ったとしても、
それはあなたが冷たいからでも、心が狭いからでもないんです。

羨ましさは、あなたの深い願いの裏返し

目の前のベビーカーに、なぜ心が反応するのか
それはきっと、その姿が “ あなたの叶えたかったこと ” の象徴だから。

人の心は、自分にとって本当に大切なものにだけ、強く反応します。

「欲しくてたまらないのに、手に入らない」
その状況が続くと、人は無意識のうちに “ 似たもの ” に敏感になります。

赤ちゃんの笑い声、親子の姿、ベビーカー。
どれも、自分の願いを思い出させてくるもの。

そして、自分にはない現実を突きつけられるような気がして
「悔しい」「なんで私じゃないの?」という気持ちが湧いてくる。

それは、あなたがずっと抱え続けてきた “ いのち ” への深い願いと向き合ってきた証です。

『羨ましさ』の下にある感情に気づいてあげて

「羨ましい」と感じてしまう、
もっと言えば、「何であの人が…」と思ってしまう自分を責める前に、
その下にある感情に、そっと目を向けてみてください。

その奥には、

  • 何度も傷ついてきた悔しさ
  • がんばってきた自分への労い
  • うまくいかないことへのやりきれなさ

そんな思いが、静かにたたずんでいるかもしれません。
それは、あなたが「ちゃんと向き合ってきた」証でもありますね。

どれも、大切なあなたの気持ちです。

今日できる、小さな心のケア

こんな日には、無理にポジティブにならなくて大丈夫です。
ただ、湧き上がってきた感情を否定せずに、
「今、私はちょっとつらいんだな」と認めてあげること。

そして、そんな自分にそっと声をかけてあげてください。

また、こんな気持ちのときは、

  • SNSをそっと閉じる
  • 静かな音楽をかけて深呼吸
  • やさしいお茶を入れて、心をあたためる

ほんの小さなことでも、自分を守る行動は力になります。
あなたが自分の気持ちを守れることを、一緒に見つけていきましょう。

わたしは、そう感じる方たちの声をたくさん聞いてきました

助産師として、心理カウンセラーとして、
妊婦さんや赤ちゃんを笑顔で迎える一方で、
心のどこかにチクリと刺さるような想いを抱える人たちの声に、何度も出会ってきました。

その度に、その痛みは、“ 自分の感情にちゃんと気づいている ”という、
大切なサインだなと感じてきました。

心がざわつくのは、
あなたが「大切な願いを持っている」からかもしれません。

その想いは、決して間違っていないし、尊いものです。
どうか、そのことを忘れないでいてほしいなと思います。



このコラムは、全5話の連載です。どの回から読んでも、あなたのペースで大丈夫。そっと心に寄り添えますように。

あなたはどう感じましたか?
このコラムが、あなたの心を少しでも癒す時間になりますように。

次回は「「自分ばっかり…」という気持ちが出てきた時に思い出してほしいこと」です。
「どうして私ばっかり…」そんな気持ちに押しつぶされそうになることはありませんか?
その感情の奥には、あなたの頑張りと、見えない傷つきが隠れています。少しだけ、優しく見つめ直してみませんか?