
※この連載について
「赤ちゃんを見ただけで涙が出てしまう」「妊婦さんを見ると、なぜか心がざわざわする」。
不妊治療の過程や流産・死産など、見えない悲しみを抱えている中で、
どうしようもない感情が湧き上がることがあります。 この連載は、そんなあなたのために書きました。
助産師として、心理カウンセラーとして、そしてひとりの女性として――。
誰にも言えなかったその気持ちを、そっと一緒に見つめていけますように。
「どうして私ばっかり…」と思ってしまうとき
不妊治療、流産、死産、待っても待ってもこない赤ちゃん。
周りはすんなり妊娠・出産して、育児の話で盛り上がっているのに、
自分だけが取り残されたように感じる瞬間って、ありますよね…
誰にも見えないところでがんばって、
痛みや不安に耐えて、 時には大きな喪失にも向き合ってきたあなた。
「なんで私ばっかり…?」
と 心がポツンとつぶやいてしまう日があっても、当然です。
それは、あなたが弱いからじゃありません。 ずっと、ずっと、がんばってきた証です。
本当に本当によくがんばってきていると思います。
「公平じゃない現実」に心が疲れる
人生って、どうしてこうも不公平なんだ…
そんな風に感じること、ありますよね? 私もよく感じています。
でも実は、私たちは
「がんばれば報われる」 「努力すれば結果が出る」
そう信じて生きてきたからこそ、
報われない現実に直面したとき、 強い無力感や怒りを感じるのですよね。
そして、周囲に自分のしんどさが伝わらないまま 「気丈にふるまってしまう」人ほど、
「自分ばっかり…」と感じやすくなってしまいます。
でも、その気持ちは あなたが真剣に向き合ってきた証拠です。
あなたは 本当によくやってきたんですよ。
「比べる」気持ちを否定しなくていい
「私なんてまだマシなほうだよね…」
「もっと大変な人もいるし」
そんなふうに、比べては気持ちを押し込めてきた あなたも ここにいるのではないでしょうか。。
でも、人の苦しみは比べるものではありません。
そして、「私ばっかり」と感じるのは、 他人と比べているからだけじゃなく、
“自分の頑張りが報われていない”と感じるから。
特に不妊治療って、相当頑張らないと乗り越えられないですよね。
これって体験した人にしかわからない気持ちでもあると思います。
だからこそ、 そんな風に感じる自分を責めないであげてほしいのです。
できること:あなたの「がんばり帳」をつけてみる
こんな時は、心の中にそっと “ がんばり帳 ” を作ってみてください。
- 一人で病院に行ったこと
- 痛い注射にも、薬の副作用にも耐えたこと
- 結果が出ない中でも 一生懸命 次の一歩を踏み出そうとしたこと
- 周囲の無神経な言葉を飲み込んだこと
書き出さなくても、思い出すだけでもいい。
「私、ちゃんとやってきたよ」 「ここまでよくがんばったね」
そう、自分に優しく言ってあげませんか?
人には見えなくても、 あなたの歩んできた道は、確かにここにあります。

心が追いつかない日は、休んでいい
人と比べたくないのに比べてしまう。
自分ばかりがつらい気がして、涙が出る。
そんな日は、無理に前向きにならなくていいんです。
ただ、「私はよくやっている」と 心の中でそっと言って、 自分にやさしくしてあげてください。
このコラムは、全5話の連載です。
どの回から読んでも、あなたのペースで大丈夫。そっと心に寄り添えますように。
あなたはどう感じましたか?
あなたは、どんな時に心がざわついたり、涙がこぼれそうになったりしますか?
その時、自分にどんな言葉をかけてあげたくなりますか?
よければ、そっと胸に手をあてて、今の気持ちを見つめてみてくださいね。
次回は、最終回「涙が出るあなたに、優しく伝えたいこと ― 感情は“敵”じゃない」です。
こらえようとしてもあふれてしまう涙。
その涙が教えてくれる、あなたの大切な感情の意味を、一緒に見つけていきましょう。