【連載コラム4】第2回:本当の気持ち、どこにも言えない

― 悲しみの中で言葉を失ったあなたへ ―

大切な命を失ったとき、言葉にならない感情の波が押し寄せてきます。
周囲の優しさにも、時に距離を感じてしまう。
自分の気持ちがどこにあるのか分からなくなってしまう。

このコラムでは、助産師として、そして心理カウンセラーとして多くの方と向き合ってきた経験をもとに、
流産・早産・死産を経験された方の心のケアについて、3回にわたってお伝えします。
この場所が、あなたの気持ちにそっと寄り添う時間となりますように。


誰にも話せない…それは当たり前のこと

「悲しいです」と言えたら、どんなに楽になるだろう…
けれど現実には、その一言すら難しいことがあります。

それは、あなたが弱いからでも、心を閉ざしているからでもありません。
大きすぎる感情は、簡単に言葉にできないのです。

「また妊娠できるよ」「まだ若いから大丈夫」

そんな言葉をかけられても、心の奥には届かない。
むしろ、自分の悲しみが軽んじられたような気がして、さらに言葉を失ってしまう。

あなたが今、話せないことがあるのなら、それは心が “ ちゃんと感じている ” 証です。
無理に話さなくてもいい。
けれど、話したくなったときに話せる相手がいることは、とても大切です。


助産師として感じた「見えない涙」の重み

病室では、「もう泣きつかれました」と言う方がいます。
けれど、その目はどこかうつろで、まだ言葉にできない想いをたくさん抱えているのが伝わってきます。

ある方は、退院のときに「家に帰ったら、ちゃんと切り替えないと」と自分に言い聞かせていました。
ご主人やご家族に心配をかけたくない、早く日常に戻らなければ――そんな思いが、さらに自分を縛ってしまうのです。

誰にも言えない悲しみは、外からは見えません。でも、確かにそこにある。
だからこそ、無理に話させるのではなく、
ただ静かに寄り添い、待つことが大事だと私は思っています。


心理カウンセラーとして伝えたい「言葉が見つからない気持ちにも意味がある」

「誰かに話すことが癒しになる」と言われても、
話すことで余計につらくなってしまうこともあります。
人は、感情があふれすぎると、言葉を見失うことがあります。

そのときに大事なのは、“ 言葉にできない気持ち ” もちゃんと心の中にあることを認めること。

そして、自分を責めないでほしいのです。

「もっとちゃんと悲しまなきゃ」「泣けない私は冷たい?」
――そんなふうに、自分の反応に戸惑う方はとても多いです。

でも、悲しみ方には「正解」はありません。
そのままの自分で、今ここにいること。それだけで十分です。




「誰にも言えない気持ち」があるあなたにとって、今、そっと聞いてほしい言葉はどんな言葉ですか?

あなたの悲しみは、あなただけのものです。
比べなくていいし、急がなくていい。
今はただ、心の奥にあるその思いを、そっと抱きしめてあげてください。
次回も、あなたの気持ちに寄り添う小さな光を届けられますように。

次回 は最終回 「夫婦で一緒に悲しんでいるのに、ひとりぼっちな気がする」です

あなたは一緒にいるのに、どこかで “ 置いていかれたような孤独 ” を感じたことはありませんか?
最終回では、夫婦の温度差と心のすれ違いに焦点を当ててお届けします。