【連載コラム7】第5回・最終回「どんな選択でも、前を向けるように」―自分自身との対話

妊娠をめぐる選択には、産む・産まないという二択だけで語れない、たくさんの思いや葛藤があります。

けれど、どんな選択をしたとしても――
そのあとには必ず、「その後の人生」が始まっていきます。

今回の最終回では、妊娠・出産・中絶といった人生の節目で決断をした女性たちが、どのようにその後を生きてきたのか。
そして、気持ちを整理し、「自分らしく」歩んでいくために大切な視点について、一緒に考えてみたいと思います。


「産む選択」をしたAさんの今

Aさんは、当時パートナーとの関係が不安定な中で妊娠がわかりました。
迷いながらも「ひとりでも産もう」と決意し、出産。現在はシングルマザーとして働きながら子どもを育てています。

「最初は、自分で決めたくせに…ずっと 毎日泣いてました」
「仕事も大変だし、育児の孤独もあって、“ 私、間違えたのかな ”って思ったこともあります」

それでも、数年たった今――
「やっぱり、あの時の自分は頑張ってたなって思えるようになりました」
「子どもが笑ってくれると、“ これでよかった ”って思える瞬間があるんです」

Aさんは、「どんな選択も、100%満足なんてない。でも、それでも“ 私なりにやってる ”って思えることが大事」と話してくれました。


「産まない選択」をしたBさんのその後

Bさんは30代後半、長年不妊治療をしていた末に、思いがけず自然妊娠をしました。
しかし、胎児の状態に重い問題が見つかり、パートナーと何度も話し合った末、中絶を選びました。

「正直、今も “ あの子 ” のことを思わない日はないです」
「けれど、あのときは本当に、精一杯考えて出した決断だったんです」
「“ あの子のことを想ってこその選択だった ” …、今はやっと そう思えるようになりました」

Bさんはその後、自分の気持ちを整理するためにカウンセリングを受けはじめ、
数年かけて、ゆっくりと自分自身と向き合う時間を持てたと言います。

「私は “ 後悔してはいけない ” って、ずっと無理に前向きになろうとしていました」
「でも、“ 後悔してもいい ”って許されたことで、やっと心がゆるんだ気がします」


「後悔」ではなく「納得感」を育てていくということ

妊娠・出産・中絶という選択には、正解も間違いもありません。
誰かのものさしでは決して測ることのできない、「その人だけの物語」がそこにあります。

時には、「あの時 こうしていれば…」という後悔が顔を出すこともあるでしょう。
けれど、後悔を感じること自体が、「真剣に向き合ってきた証拠」でもあるのです。

私たちは、さまざまな決断を通して、自分と深く向き合う機会を得ます。
それは痛みを伴う作業かもしれませんが、
「後悔」よりも、「私はあのとき、できる限りのことをした」という “ 納得感 ” を育てることは、
その後の人生を自分らしく生きていくための、大切な土台になります。


「あなたが今日ここまで歩いてきたことに、ひとつでも“ 自分らしさ ” を見つけられますか?」

今、あなたはどんな気持ちでこの文章を読んでいるでしょうか。

これまでの人生のなかで、嬉しかったこと、悲しかったこと、迷ったこと、苦しかったこと。
そのどれもが、「今のあなた」をつくってきた大切なピースです。

“ 自分らしさ ” とは、完璧であることではなく、
不完全な選択を、自分なりに背負って生きる姿の中にあるのかもしれません。

どんな選択をしたとしても、あなたの人生は続いていきます。
傷が癒えるには時間がかかることもあるし、癒えないまま寄り添って生きることもある。
それでも、少しずつ “ 今 ” を大切にしていけるようになったとき、未来の景色は変わっていきます。


最後に ――もし、心が疲れていたら

この連載を通して、誰にも言えなかった気持ちや、心の奥にしまっていた記憶に触れた方もいるかもしれません。

「自分の気持ちを、安心して話せる場所がほしい」
「誰かに聞いてもらいたいけれど、どう言葉にしていいか分からない」

そんな思いが湧いてきたら、それは心が「ひとりで抱えきれないよ」と静かに教えてくれているサインかもしれません。

私のカウンセリングでは、判断や評価はしません。
あなたの中にある思いを、ただ、ありのままに受けとめる時間を大切にしています。

あなたがこれまで歩いてきた道を、丁寧にたどりなおすことで、
「私はこれでよかったのかもしれない」と思える瞬間がきっと訪れます。

どうか、ひとりで抱え込まずに。
よければ、あなたの物語を、聴かせてください。

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最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この連載が、あなたにとって少しでも「自分と向き合う」時間の支えになれたのなら、心から嬉しく思います。

あなたのこれからが、少しでも穏やかで、自分らしくありますように。