「もういいよ」の裏にある、ほんとうの気持ち 〜愛されたいのに、素直になれないとき〜
「もういいよ」
「忙しいなら、無理しないで」
「別に、かまってほしいわけじゃないし」
そんな言葉を、あなたは誰かに言ったことがありますか?
あるいは、パートナーからそんな言葉を向けられて、戸惑った経験はありませんか?
このコラムは、カップル・夫婦カウンセリングを行っている中で、実に多くの人が無意識にやってしまっている「不器用な愛の伝え方」についてお話ししたいと思います。
「本当は、ただ愛されたい」
カウンセリングの現場でよく耳にするのは、「わかってほしいのに、わかってもらえない」「素直になれなくて、自分で関係を壊してしまう」という言葉です。
たとえば、仕事が忙しいパートナーに寂しさを感じたとき。
本当は「寂しいな、もっと一緒にいたいな」と伝えたいのに、それが言えず、代わりに「もういいよ」と突き放してしまう。
そして、相手が「そう…わかった」と引き下がると、「なんで何もしてくれないの?」と怒りが込み上げてくる――。
これは、愛されたい気持ちの裏返しです。
「自分から求めて断られたら傷つく」から、先に自分から距離を置いてしまう。
でも本当は、わかってほしい。受けとめてほしい。安心させてほしい。そんな切実な願いが、そこにはあります。
なぜ「突き放す言葉」でしか伝えられないのか
こうしたやりとりの根っこには、「素直になれない自分」がいます。
過去に寂しさを伝えて否定された経験や、感情を見せることが弱さだと学んできた人ほど、「本音を言うこと」そのものに恐れを感じてしまいます。
だから、「察してほしい」「気づいてほしい」という形でしか表現できなくなる。
しかし、こうしたコミュニケーションは、相手にとっては「試されている」「急に突き放された」と感じられ、心の距離を生みます。
関係を近づけたいのに、どんどん遠ざけてしまう――。
これは、お互いにとってとてもつらいパターンです。
「不器用な愛し方」の奥にあるもの
実は、「もういいよ」と言ってしまう人ほど、本当はとても繊細で、深く愛したい人であることが多いのです。
でも、自分の気持ちに素直になること、寂しいと伝えること、愛されたいと願うこと。
それが「わがまま」「面倒くさい」と思われるのではないかという不安から、正直な感情を隠してしまうのです。
けれど、素直になることは、弱さではなく勇気です。
感情を言葉にすることは、関係を壊すどころか、より深めるきっかけになるのです。
自分のパターンに気づくだけで、関係は変わり始める
このコラムを書こうと思ったのは、こうした「不器用な愛し方」が、決して特別なものではなく、多くの人が無自覚に繰り返しているパターンだということに気づいたからです。
そして、自分の癖や傾向に気づくだけでも、関係のあり方に変化が生まれていきます。
「どうしてあの時、あんな言い方をしてしまったんだろう」
「あのとき、素直に『寂しい』って言えていたら」
そんな後悔を繰り返す前に、ほんの少し、自分の内側を見つめてみる。
そして、自分の気持ちに正直になることから始めてみませんか。
あなたに問いかけたいこと
・あなたがパートナーに「試すようなこと」を言ってしまうのは、どんなときですか?
・そのとき、心の奥で本当はどんな言葉をかけてほしかったですか?
・もしも相手が安心して受けとめてくれるとしたら、どんな気持ちを伝えたいですか?
まとめ:壊さなくても、伝えられる
「もういいよ」と突き放すのではなく、
「寂しかった」「本当は甘えたかった」
そう言える関係は、壊れにくく、しなやかで、あたたかい関係です。

一人で抱え込まなくても大丈夫。
少しずつでも、自分の本音にやさしく触れていくことが、健やかなパートナーシップへの第一歩になります。
次回は、「なぜ『終わりにしよう』と口にしてしまうのか」をテーマに、さらに深く見ていきます。
なぜ「終わりにしよう」と言ってしまうの 〜試し行為で関係を壊してしまう前に〜